経営・運営

設備を入れても人手は減りません|特養・老健の運用設計

投稿日2026年8月11日
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歩行訓練設備を導入すれば職員の負担が減る、というご期待をいただきます。実際には、プログラムを組み直さなければ負担は変わりません。何を組み直す必要があるのかを整理します。

特養・老健を中心に、導入のご相談でこう聞かれることがあります。

「これを入れたら、職員の負担は減りますか」

正直にお答えすると、設備を入れただけでは減りません。

この記事では、なぜ減らないのか、何をすれば変わるのかを書きます。売り込みとしては不利な内容ですが、導入後に「思っていたのと違う」となるほうが、お互いに損失が大きいと考えています。

人員配置基準は設備では変わりません

まず、制度上の話です。

介護保険の人員配置基準は法令で定められています。設備を導入したからといって、配置しなければならない職員数が変わるわけではありません。

「機器を入れたので人を減らせる」という話は、この点だけでも成立しません。

設備は「できること」を増やしますが、「やること」は減りません

もう一段、実務の話をします。

設備は、これまでできなかったことを可能にします。歩行動線を確保する、両手が自由な状態で歩いてもらう、転倒への備えを持ちながら歩行を見守る。

しかし、それは仕事が増えるということでもあります。

従来の時間割をそのままにして設備を追加すると、設備を使う時間が「上乗せ」になります。職員から見れば、やることが1つ増えただけです。

これが「入れたのに使われない設備」が生まれる仕組みです。

変わるのは「置き換え」ができたときです

負担の総量が変わるのは、追加ではなく置き換えになったときです。

結果
従来の訓練+設備を使った訓練 負担は増えます
従来の訓練の一部を、設備を使った訓練に置き換える 負担は変わらないか、内容が変わります
移動介助を、設備を使った歩行に置き換える 成立しません。設備は3m×5mの区画内のもので、居室から食堂までの移動を代替できません

2番目が現実的な形です。訓練の中身が入れ替わるだけで、総量は増えません。

3番目を期待されることがありますが、成立しません。設備は区画内のもので、施設内の移動介助そのものを代替する性格のものではないためです。

2番目も、どの訓練を置き換えるかを決めていなければ起きません。

組み直す必要があるのは4つです

導入と同時に見直しが必要になるのは、次の4点です。

# 組み直すこと 決めること
1 時間割 どの利用者が、いつ、何分使うか。既存のどの時間と入れ替えるか
2 人の配置 誰が付き添うか。1人で足りるか、2人必要か
3 置き換える対象 従来の訓練・介助のどれをやめるか。やめるものを決めないと上乗せになります
4 記録と評価 何を記録し、どう振り返るか。既存の様式に組み込めるか

3番目がいちばん難しく、いちばん効きます。

新しいことを始めるより、これまでやっていたことをやめる判断のほうが難しいためです。しかしここを決めないと、負担は増える方向に働きます。

組み直しは、設備の検討と同時に考えてください

この組み直しは、設備を売る側が黙っていていい部分ではないと考えています。

導入をご検討いただく際は、次の4点を施設側でも整理しておいてください。設備の話と切り離せない部分で、現地の状況を伺いながら詰めていくことになります。

  • どの時間帯に、どの利用者を対象にするか
  • 既存の機能訓練のどこと入れ替えるか
  • 職員の配置をどうするか
  • 記録の様式に何を足すか

施設ごとに利用者の状態も職員体制も違うため、一般的な答えはありません。

導入しないという結論もあります

組み直しの話をすると、「今の体制では回らない」という結論になることもあります。

その場合は、そうお伝えします。設備だけ入れて使われないより、そのほうが良いためです。

設備の検討と、運用の検討はセットです。どちらか一方だけでは、期待した結果になりません。