「人が採れないと出店できない」── これも、多くの経営者がすでに感じていることです。ただ、ここでもう一段掘ると、本当の律速が見えてきます。多店舗展開を止めるのは”採用力”ではなく、”1店を回すのに何人の希少専門職が要るか”という係数です。
採用を頑張っても、PT・OTは増えない
理学療法士・作業療法士(機能訓練指導員)は、全国的に希少で、自社の採用努力だけで供給が増える職種ではありません。ここが見落とされがちな点です。もし、あなたの差別化が「1回の歩行訓練に専門職が2人がかり」で成り立っているなら、その差別化はそもそも複数店に複製できません。採れない職種を、店の数だけ倍々で必要とするからです。採用を頑張る以前に、モデルが数式として詰んでいます。
律速を下げる ──「1店あたりの専門職係数」を小さくする
多店舗で伸びる差別化の条件は、「1店を回すのに要る希少人材が少ない」ことです。同じ専門職がより多くの利用者・より多くの店をカバーできる設計になっていれば、限られた専門職で複数店を成立させられます。多店舗展開とは、突き詰めればこの係数を下げる設計の勝負です。採用は係数を”埋める”手段にすぎず、係数そのものを下げないと、埋め続けても伸びません。
夢歩の「1名運用」は、採用の話ではなく係数の話
夢歩(YUMEHO)は、免荷追従機構と、特許を取得した「はごろもふぃっと」により、介護職員1名運用を想定した設計です。一般的な歩行訓練は、転倒への配慮から付き添いに人手がかかりがちですが(従来は2〜3名体制になることもあります)、レールとはごろもふぃっとが身体を支えることで、少ない人数で提供しやすくなります。
これは「設備があると採用に有利」という話にとどまりません。1店あたりに要る人手を下げ、少ない専門職で複数店を回せるようにする ── 多店舗モデルが数式として成立するための前提条件です。採用の旗であると同時に、スケーラビリティの係数そのものに効く。ここが、夢歩を多店舗の文脈で見たときの核心です。
係数を下げる設計は、職場の魅力にもなる
もう一つ、採用の側面があります。夢歩は、両手が自由になり、ボール遊びなどのプレイ型リハビリができる装置です。利用者が笑顔で参加し、施設全体の雰囲気が明るくなる ── こうした現場は、リハビリ志向の職員にとって「ここで働きたい」と思える環境になります。求人票に書ける違いが乏しく賃金勝負になりがちな汎用デイに対して、「安全に、楽しく身体を動かせる現場」は、採用と定着の両面で効く旗になります。
ただし、係数を下げても質は自動では上がらない
1名運用は「安全や質を軽視してよい」という意味ではありません。適切な計画・アセスメント・見守りは、変わらず必要です。設備は人手の係数を下げますが、運営の質を代替はしません。職員の定着も、教育・裁量・成果の共有という運営で決まります。設備を、採用と品質の万能薬にしないこと ── ここを取り違えると、係数を下げたつもりが質を落とすことになります。
まとめ
多店舗の壁は「採れるか」ではなく「1店あたり何人の希少人材が要るか」。夢歩の1名運用は、採用の旗であると同時に、その係数を下げてモデルを成立させる設計です。採用を頑張る前に、係数を下げる。この順序が、多店舗を数式として成立させます。
※ 本記事は介護事業の採用・人員設計の考え方を一般的に整理したものです。採用の成否・人員配置は、地域の労働市場・処遇・運営体制・関係法令により異なります。夢歩の導入によって人員基準の充足や採用の成功を保証するものではありません。